目に見えない大切なものを見つめる時代
ボスが教えてくれた忘れられない言葉がある。
まだ、20代だった頃、僕はたくさんの厳しい場面にへこたれる寸前だった。そんなある日の飲み会で、ボスに「強くなりたいんです」と打ち明けた。
ボスは遠くを眩しそうに見つめ、僕のグラスにビールを注ぎながら、呟くように応えた、
「古橋さんね、人間なんてみんな弱いんだよ。強くなんかなれないんだ」。
僕はビールを一気に飲み干して、空になったグラスを握り直し天井を見上げた。
ボスはさらに穏やかにゆっくりと、こう言った。
「でもね、優しくはなれる」。
僕はハッとした。自分のことばかり考えている弱々しい僕の背中が見えた気がした、「優しさが強さなんだ」。そんな理解をした。
あれから20年以上の時間が経過している、今、僕はこのときの言葉を振り返り、もう一つ大切なことを確認している。それは、星の王子様が教えたくれてメッセージ「本当に大切なことは目に見えない」ということ。
目に見えない大切なモノを見つめる時代になったような気がする。
大阪の名もない小さな古い居酒屋の黒ずんだテーブルと、よく冷えたビール、白い文字でサッポロビールと書かれた小さめのグラス、あの匂いと感じが未だに忘れられない。そして、これからも忘れることはないだろう、そう思うんだ。
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